凛として―近代日本女子教育の先駆者下田歌子

凛として―近代日本女子教育の先駆者下田歌子

凛として―近代日本女子教育の先駆者下田歌子

日本の近代女性教育を創り出してきた人に下田歌子という人がいるが、下田歌子に興味をもってどんな人だったのかを知るために読んだ。

下田歌子の業績などを知るために読もうと思ったのがなんでこの本だったのかは忘れてしまったが、これは期待していた客観的な人物像を描く本ではなく、下田歌子とその周辺の資料をもとにした小説だった。

下田歌子にたいするおおまかな経歴、業績などについてはおそらく虚構ではないと思うので、自分の期待していたものはおおまかには得ることができたかなと思うが、小説なので下田歌子とその味方についてはとても好意的な描写をしているが、その敵対者につてはものすごく悪辣な表現をしている。

小説なのでそれでいいのだけれど、人物像についてはかなりの虚構が入り込んでいるのではないかという気がする。

特に下田歌子を誹謗中傷した人物として、社会主義者の幸徳秋水が登場しており、幸徳秋水の主催する日刊平民新聞にて下田歌子を批判する記事を明治40年から連載したとある。

平民新聞については元々ゴシップ記事をメインにした新聞だったようなので、本ではこの平民新聞で連載された下田歌子のスキャンダル記事を完全に嘘としている。 明治という時代背景では虚実入り乱れた記事であったのだろうとは思うが、火のないところに煙は立たずともいうわけで一概に嘘とも言い切れないのではないかと思ってしまう。

同じように業績などについても読みやすさ優先で細部がかなり簡略化されていて、もっと詳細を知りたいのなら参考文献にあたってみるしかない。

とはいえ、男尊女卑が強かった明治の時代に自らの才覚でもって政治や社会とわたりあい、大きな業績を残した女傑という面からはなかなか面白い小説ではあった。