エンデの遺言「根源からお金を問うこと」

エンデの遺言 ―根源からお金を問うこと (講談社+α文庫)

エンデの遺言 ―根源からお金を問うこと (講談社+α文庫)

1994年のエンデ晩年のインタビューを元にして1999年にNHKで放送された「エンデの遺言」という番組が放送がある。
この本はエンデのインタビューと、番組をもとにより深くエンデの思索のもとや理論背景などをまとめている。

タイトルとして「エンデの遺言」となっているが、エンデの遺言をとっかかりにして、シルビオ・ゲゼルの自由貨幣論、減価する貨幣、そして地域通過へと話がすすんでいく。 お金の話が大半で、エンデの思想については周辺資料から推測するだけになっているのが残念ではあるが、日常的につかっているお金、そして投資という形で関わっている経済について、役割や性質などより深く考えるとっかかりになる部分がおおく、そういう意味で得るものがあった。

この本で重に紹介されているのが、シルビオ・ゲゼルの時間とともに価値が減る自由貨幣の理論で、毎週水曜日になると一定金額のスタンプ(切手のようなもの)を貼らないと使用することのできない貨幣というのが中心になっており、毎週一定の税金が掛るために溜め込むことできず、流通することを促し、経済を発展させるというものになっている。 この理論の周辺に生産されたものは消費されて価値がなくなるのに、貨幣には価値がなくならないため、溜め込んでおけるということや、溜め込んだ財に利子が付きそれにより不均衡が生じることなどいろいろと理屈はあるのだけれど、お金は人間が作ったものであるから創りなおすこともできるはずだというあたり、いろいろと示唆的で面白かった。

4章ゲゼルの自由貨幣論などお金の作りなおしへの挑戦で、各地で生れた地域通貨について、アメリカで行なわれていたイサカアワーという地域通貨について紹介されている。 ここで紹介されているイサカアワーは新しい経済、コミュニティの創造と発展を予想させるようなものになっているが、残念ながら2015年時点ではイサカアワーは殆ど使用されることなく、衰退しつつあるらしい。 https://greenz.jp/2015/05/23/wataden_ithaca/

日本でも2000年ごろに多くの地域で地域通貨が発行されたが、流通量の少なさ、地域通貨によって入手できる財・サービスの不均衡の問題などからほとんどが衰退してしまったようだ。

ゲゼルの自由通貨理論の減価する貨幣というものは、面白い理論であるし、特にデフレで苦しみつづけている日本経済などには有効な手段になるのではないかと思う。


P37,エンデの説明では、社会全体を精神と法と経済の三つの機能に分けます。そのうえで精神生活では自由が、法生活では平等が、経済では助けあいの力が基本理念であると考えるべきだというものです。


P55、エンデはラストインタビューで、「需要なポイントは、例えばパン屋でパンを買う購入代金としてのお金と、株式取引所で扱われる資本としてのお金は二つの異った種類のお金であるという認識です」と語っています。


P250,1,交換の媒体、2、価値の尺度、3、価値の保存、4、投機的利益の道具、5、支配の道具